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日本慢性期医療協会 慢性期リハビリテーション委員会アンケート
介護保険療養病床における“短期集中リハビリテーション”の効果調査
結果報告
 
慢性期リハビリテーション委員会 委員長 山上久
 
 

【目的】
介護保険療養病床における短期集中リハビリテーションの実施(算定)動向を把握するとともに、効果の検討と今後の効果的な運営について探求することを目的とする。

【対象と方法】
日本慢性期医療協会に所属する病院のうち、介護保険療養病床を有する病院を対象とし、基本調査として「病棟調査票」、短期集中リハの効果検討用として「患者調査票」を郵送して各設問に対する回答を依頼し、FAXでの返信を求めた。 

調査期間は平成20年11月17日〜同年12月10日とした。

【結果1 病棟調査】
「病棟調査票」については、103病院(9521床)より回答を得た。
●患者の主病名は脳血管疾患が62.8%と最も多く、次いで骨・関節疾患が9.4%、廃用症候群5.9%、循環器疾患4.4%、呼吸器1.3%、その他10%であり、脳血管疾患に由来する諸種の症状を呈する患者が多い。
●患者の要介護度は、要介護5(54.2%)が最も多く、次いで要介護4(26.2%)であり、患者の重度化がうかがえる。
●平均入院日数は662.6日であり、800日〜1200日以上の患者数が過半数(55.6%)を占めることから、重度化に伴い入院が長期化するケースが多いことがうかがえる。
●短期集中リハ加算算定状況の設問に対しては、「必要な患者すべてに算定できている」が53.9%、一方、「算定できない場合がある」が46.1%と両者をほぼ二分する結果となった。
●平成20年10月の1ヶ月のうち、短期集中リハ加算を算定した実人数は630人(6.9%)であった。
●短期集中リハ加算が算定できなかった理由<複数回答>は、短期集中リハ加算算定期間越え(52%)が最も多く、次いで実施頻度不足(34%)、マンパワー不足(32%)の順に高い傾向を示しており、マンパワー不足による影響が大きいことがうかがえる。         一方、リハマネ加算が算定できていない(28%)、患者・家族が希望しない(10%)、算定基準や運用の方法が分からない(8%)など、患者・家族への啓蒙不足や運用上の問題も指摘できる。

【結果2 患者調査】
「患者調査票」については、105病院(1401人)より回答を得た。
●短期集中リハを実施した患者の性別は男性37.1%、女性62.9%であり、平均年齢は81.95歳であった。
●短期集中リハを実施した患者の要介護度は、要介護5(44.9%)が最も多く、次いで要介護4(27.2%)であり、リハ対象患者の重度化がうかがえる。
●短期集中リハを実施した患者の主病名は脳血管疾患が62.9%と最も多く、次いで骨・関節疾患が17.7%であり、脳血管疾患に由来する諸種の症状を呈する患者が大部分を占める。 加えて、加齢に伴う運動機能や認知機能低下の合併も推測できる。
●優先的に実施したリハプログラム<複数回答>は、ROM(60.1%)・筋力強化(42.7%)などの心身機能面へのアプローチに加えて、ADL・IADL(26.2%)・環境整備(11.9%)をはじめとする生活機能面へのアプローチも併用されていた。
●短期集中リハ実施期間中にリハチームが特に連携・協業したリハ・ケアプログラム<複数回答>は、起居・移乗(77.4%)〜移動・歩行(46.5%)が多くを占める反面、整容(11.2%)・入浴(7.1%)等は低い実施率にとどまった。
●短期集中リハ(加算)実施前後の評価結果の比較においては、BIが平均40.9点から平均43.7点、FIMは平均20.4点から23.2点へと共に改善する結果を得たが、HDS-Rでは平均11.4点から平均10.8点へと若干の低下を認めた。
●短期集中リハ(加算)実施後の転帰については、入院を継続する患者が多くを占め(72.2%)、次いで自宅退院(7.9%)、介護老人保健施設への入所(7.4%)であった。

【まとめ】
介護保険療養病床入院患者は、加齢に伴う心身の機能低下に加えて、脳血管疾患に由来する各種症状を呈する患者が多く、要介護度別では要介護5が過半数を占めるなど、重度化がうかがえる。

今回の調査の主目的である“短期集中リハの効果”については、FIM及びBIデータにおいて若干ではあるが改善傾向を示し、自宅退院を果たしたケースも認めたが、多くのケースが入院加療を継続する結果となった。

一方、HDS-Rのデータは芳しくなかったことから、認知機能面へのアプローチの確立も課題といえる。

短期集中リハ算定の動向は実施・非実施を二分する結果を得たが、算定できなかった場合の理由の多くが実施頻度不足やセラピストの不足をはじめとした“マンパワー不足”に由来するものであることから、今後はマンパワーの整備と併せて、少ない人員でも“効率・効果的”に実施できるような展開に向けた取り組みに努めることが急務である。

具体的には、間接業務の簡素化や情報・介護技術共有の促進など、有機的なチームアプローチの展開に努めることが即時効果に繋がるとともに、これらの取り組みが患者様の心身・生活機能の向上と併せて、リハチームのチーム力向上、スタッフのリハマインドの醸成に繋がるものと確信する。

短期集中リハビリは介護保険療養病床に入院する患者に対し、必要な時期に必要な量・質を備えたリハビリを提供することを目的として制度化されたものである。

“短期集中リハビリテーション”と併せて、今春の介護報酬改定において創設される“認知症短期集中リハビリテーション”にも速やかに対応するべく委員会活動を展開していくことが我々の職責である。

   

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