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日本慢性期医療協会 会長再就任にあたって  平成22年6月21日
 
Dr.takehisa2010

日本慢性期医療協会  
会長 武久洋三  

 

 

 いよいよ、日本の夏に入りました。皆様には、ご清祥のことと存じます。

 さて、去る6月17日の日本慢性期医療協会総会にて、私事、再び会長にご推挙頂きました。誠に身に余る光栄でございます。思えば2年前、会長を拝命いたしたと同時に協会名を日本療養病床協会から日本慢性期医療協会に変更することを唐突に提案したにもかかわらず、お認め頂きました。ちょうどあの頃は、まだ療養病床への風当たりが強く、削減対策の真っ只中で、まるで無駄の象徴のように思われ、言われなき迫害を受けていたと思います。私のする事は、そういう風潮をがらりと変えて、即ち潮目を変えて、慢性期医療の必要性と重要性を認めてもらう事でした。

 その為に私は、7つの約束、3つのお願いを先ず発表し、この2年間に立て続けにいろいろな対策を実行致しました。その間、会員の皆様には、度重なる調査にご協力を頂き、幸いにして現場からの生きた現状を統計として公にお届けすることができました。多くのご協力に心より感謝いたしております。

 その結果、21年4月の介護報酬改定、22年4月の診療報酬改定で当協会の要望を多く取り上げて頂きました。幸に幅広く、医療・介護事業を展開されている会員病院は、増収増益を確保できたのではないかと思います。また、厚労省から出される資料にも、一般、療養という記載はなくなり、急性期・慢性期という表記がなされております。しかし、何よりも今後は24年の同時改定が大きな山となることは必定であります。ここに向かって会員の皆様と共に頑張っていきたいと決意を新にしております。

 幸にこの2年間に200以上の新会員の皆様にご入会していただきました。大幅に、会員が増えているのは各種医療団体の中でも当協会のみであり、それだけ重い責務がございます。表面的な上滑りの活動ではなく、真剣に真面目に現場から発信し、慢性期医療の重要性を厚労省をはじめとする行政や国民に強く主張し、その成果を勝ち取るまで頑張りましょう。

 時まさに、保険局と老健局合同による、一般病床、療養病床、介護保険施設利用者の横断的患者調査が7月7日を締め切りに行われます。この結果によって24年同時改定に合わせて、医療・介護提供体制が大幅に変革される可能性が大です。会員の皆様も現状を正確に記載して調査に協力することをお願い致します。

 ご存知の通り、2025年の年間死亡者数は160万人とされており、現状の1.5倍となる予想です。まだまだ先と思われるかも知れませんが正に指呼の間なのです。政府が病院病床を増やさない限り、急性・慢性に関わらず、平均在院日数を大幅に短縮しなければ対応できない事は明らかです。1.5倍といっても高齢者の死亡者数の増加でありますので実際の患者数としては2倍以上増加すると考えられます。平均在院日数を半分にするとしても、慢性期病床を早期に退院せざるを得ない人達がここ数年で増えていくことが確実です。そうなると老健や特養に関わらず、在宅を含む居住系施設へ流れ込むでしょう。すなわち慢性期病床では、急性期からの回復期の患者と重度慢性期患者で埋め尽くされてしまう恐れがあるのです。時まさに特養の介護職員に医療行為を容認する通達が出されたり、地域包括ケア研究会の報告書にもあるように、大幅に増加する重度在宅療養者に対する支援体制は、喫緊の課題です。その中心的役割は、人的資源の乏しい診療所ではなく慢性期医療を中心とした在宅療養支援病院が担う事でしか解決しそうにはありません。そして、在宅療養支援病院が地域包括医療センターの役割を持ち、地域包括支援センター機能も統括していかなければならないでしょう。

 従って私達慢性期医療を中心として日本の医療を支えている医療機関としては、前述のように回復期機能、重度慢性期機能、に加え、診療所を支援して、強力な在宅支援機能を併せ持つようにならなければ、10年後の病院像は描けないのではないでしょうか。おそらく、厚労省は、そういう方向に動くと思います。慢性期病院で平均在院日数が長く、在宅復帰率も低い病院は、この2年間で出来るだけ改革を進めて頂きたいと思います。当然、当会としても会員の病院の現状を守ることを重大な責務と考えておりますが、何しろ時代の要請であり論理的反論がしにくい現状をご理解賜りたいと存じます。

 一方、介護療養型医療施設の廃止が平成24年3月に法律的には決定しておりますが、私は、上記の3つの機能を促進していこうと思う病院であれば介護型であろうと医療型であろうと存続は可能であると考えています。介護型の利点も数多くあり、単に介護保険を使うか、医療保険を使うかというシステム上だけの問題だと思います。大幅な経過措置を勝ち取るまで全力を尽くします。さらに中小のケアミックス病院で、6人部屋〜8人部屋が療養病床になれないままに一般病床として残存してしまっている病院の療養環境の改善も重要な課題です。当会の病院だけでなく全日病の病院に対しても長期低利融資を導入してもらい、療養環境改善を法的に支援していただくように強く要請しなければなりません。というのは、今後ますます必要となる慢性期医療病床が少なくなることを何としても避けなければならないからです。

 民主党に政権が変った事で「強い社会保障が景気を支える」と主張されていることを、力強く評価しておりますが、日本慢性期医療協会としても民主党に対する要望書を作成し、提出する予定でございますので、今後とも力強いご支援をよろしくお願い致します。

 

 
 

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