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新しい年を迎えて
−療養病床の価値が世間に再認識され、希望のある年に−
 
機関誌LTC第53号(平成19年1月号)より
 

 昨年に続き今年も心からおめでとうございますといえる年にはなりませんでした。介護療養型医療施設の廃止、不適切な医療区分の導入などにより療養病床の病院は大きな変革を求められました。

 何の準備もなく導入された制度は病院だけでなく、広く国民の医療や介護に大きな影響を与えています。今年は療養病床のあるべき姿を再確認し、広く国民にも理解を求め、より病院らしい療養病棟になるべく努力をする年だと思います。

 将来、療養病床は医療療養病床だけになります。その役割は医療区分の高い患者さんを中心に見ていくことになり、医療の充実した病院として再構築していく必要があると考えます。医療区分の項目の内容は、いわゆる亜急性やICUのような状態も含まれており、亜急性期入院医療との整合性を図りながら、それぞれのあり方を検討していかなければならないと思います。

 当然、今の医療区分では不適切で見直しが必要です。2006年11月に始められた患者特性調査やタイムスタディなどの結果は2007年3月には出る予定なので、その結果から医療区分の見直しを行うことになっています。医療区分1から2にどれだけなるかは予測できませんが、今の医療区分1の2割程度は医療区分2に相当すると考えています。一方、医療区分2から1に下がる部分もありそうです。

 また在宅支援機能の充実も必要です。これから2050年までは高齢者が増え続けます。それに伴って、広い意味での在宅で療養する人は増え続けます。ここに、チーム医療やアセスメント能力を培ってきた療養病床の力を発揮するべきです。

 地域の診療所、特に在宅療養支援診療所と連携を図り、いつでも入院を引き受ける体制の整備が必要と考えています。在宅療養している高齢者は、いきなり急性期病院に入院するよりも、リハビリテーションや介護力が備わった療養病床で治療するほうがより効果的であると考えています。そのためには、療養病床の医師には確実で総合的な診断能力が求められます。このような療養病床の存在は、急性期医療を支える大きな力であると確信しています。

 昨年10月5日、厚生労働省は75歳以上の「後期高齢者」の診療報酬の見直しの検討を始めました。昨年は各方面からのヒアリングを行っており、包括払い制の拡大や高齢者医療のあり方の基本方針を2007年3月をめどに決める方向です。また、現在の外来・入院の報酬に加え、看護や介護と連携した在宅医療サービスの普及を促す報酬の議論をすることとなっています。

 2006年4月の診療報酬改定のように、先に医療費削減の目標数値を決め、それに合わせて制度をつくるのは明らかに間違いであり、真の高齢者にふさわしい医療のあり方が検討されなければなりません。高齢者に優しい制度を目指さなければいけません。決して2006年4月改定の愚を繰り返してはいけません。

 高齢者医療制度は、医療区分以上に高齢者医療に与える影響は大きいと思われます。行方を見守るとともに、発言もしていく必要があります。そのためには、高齢者医療に携わる私たちは力を結集し、発言をするとともに実績を積んで行かなければなりません。現在の会員病院数は720病院ですが、さらなる会員増強が必要と考えています。

 また、病院部分の充実、住まいの機能の分離などを図り、効率的で安全な質の良いサービスの提供を真剣に考えなければいけない時に来ているといえます。

 高齢者の生活や人生を見据え、医師をはじめとした多くのスタッフがチーム医療を行うことは、療養病床の得意とするところであり、われわれ医療人の使命だと思っています。また、職員が生きがいを見つけ、職場に誇りを持てるように導く必要があります。職員の満足なしには決して良い医療やケアはできないと確信しています。

 療養病床の患者さんは、今失われようとしている日本のよい文化、食習慣、緑に満ちた自然、自然をうたった歌などに慣れ親しんでいます。この文化を医療従事者は学び、理解しなければ真のケアはできないと思います。決してケアする側の文化や価値観を押しつけてはいけません。また、私たち医療従事者は良い日本の習慣や文化を後世に伝えていかなければならない立場にもあります。

 安倍総理は、美しい国、日本を目指しています。医療も美しく優しくなければならないと考えています。今年は療養病床の価値が世間に再認識され希望のある年になるように望んでいます。(平成19年元旦)

 

 
 

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