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麦谷眞里先生著、『60歳からのマジック入門』を推薦します!

 
日本慢性期医療協会 会長 武久洋三
 
 
 
 
現役厚生労働官僚が書いた60歳からはじめるマジック入門書!
マジック歴50年の著者がやさしく丁寧に解説!!

◆CONTENTS◇
マジックは手先の器用さだけじゃない!観客の「心」を誘導することに成功すれば、どんなマジックも上手に演じることができます。18種類のマジックを収録。そのうち13種類は特別なマジック専用道具がなくても演じることができます。孫の誕生日パーティーや地域の会合などで、実際に観客に対してどのように語りかけたらよいか、演じたらよいかなど、懇切丁寧に解説。

 
     
  武久洋三会長推薦文 〜麦谷眞里先生の新刊に寄せて〜  
 

よく手先を使う人は呆けないとか、右脳が発達していると呆けないとか言われる。呆けるという言葉は今は使用してはいけないのかは知らないが、「認知症になる」と「呆ける」では多少ニュアンスは異なるのではないか。

人間は確実に老化する。身体的老化は勿論のこと、精神神経学的機能の老化は人権崩壊にかかわるもので、防ぐことができるなら何としても防ぎたいものである。音楽家、習字、美術家、作家、俳人、生け花、茶道等々、手先や頭を使う人は呆けにくいと言われるし、確かに周りを見渡してみても、歳をとってはいても矍鑠としている人たちが多い。

実は私の父は、70歳位からそれまでの無趣味が嘘のように日本画、俳句、さらに手品まで始めてしまった。86歳で癌で死亡する直前まで頭脳は明晰であった。特に下手な手品には周りは閉口していたものの、本人は至って真面目で、機会があれば人を集めて手品を演じることに無上の喜びを感じていたと思う。何の習い事でも、自分が練習を積み重ねてきた成果を人に見てもらい披露することによってまたモチベーションが上がる。見た人がお世辞にも「うまいね」とか「たいしたもんだ」などと言おうものなら、まさに天にまで昇ってしまいそうである。

このたび、誠にタイムリーな本が出版された。50の手習いならぬ60の手習いとしてはじめるには、私は手品がベストだと思っていた。題名は「60歳からのマジック入門」である。東京堂出版という、れっきとした一流出版社の発刊である。そして著者は、何と現役の厚生労働省官僚である。現在、大臣官房審議官の職にある麦谷眞里氏である。奇しくもこの麦谷氏は、平成17年暮れの「魔の政策」といわれた「療養病床大幅削減」「介護療養型廃止」のときの保険局医療課長であった。それまで包括制であった医療療養病床を、一切の試行もしないでいきなり恣意的な医療区分を導入した張本人である。

当時、私は副会長として打倒に当たっていたが、小泉郵政選挙の自民大勝の末に力をつけた経済財政諮問会議が医療費の大幅削減をした末、厚生労働省が苦し紛れに約束させられた平均在院日数短縮という命題に対し、日数の長い療養病床をなくしてしまえば簡単に平均在院日数を短縮できるという誠に姑息な対策を優秀な官僚のトップが決断して、厚生労働省全体が療養病床悪物論にまさにポピュリズムとして台頭していたときであった。交渉は誠に厳しく、有無をいわせぬ形で決まってしまった。しかし麦谷氏の人間性の故か、不思議に彼を憎む人は当時の日慢協にはいなかった。後で聞いた話だが、その当時は、彼は敢然とトップに対し「これは誤った政策だ」と直訴したらしい。しかし皮肉なことに、この青天の霹靂のような政策は、それまで惰眠を貪っていた多くの療養病床の整備を飛び上がらせることとなり、その結果、療養病床は本来のpost acuteの重症を受け入れ、治療して地域に帰すという役目を果たさなければならないというように、マインドが変換されたことは会員諸君も同意されると思う。今さらながらに思えば、老人収容所といわれても仕方のない療養病床が何と多かったことか。今でも依然として老人収容所のまま残っている病院もあるものの、日慢協の会員諸氏はリハビリ力を増強し、積極的に慢性期患者を治療して地域に帰す努力をしている。

当時の医療課長と老健課長の間の省内対決と、医療保険、介護保険の綱引きを称して私が「M・M戦争」と揶揄したものだが、今やとても懐かしい限りであるし、現在では麦谷氏に感謝しているし、一方の三浦先生にも日慢協は大いなる信頼を置いている。慢性期医療の改革期にはなくてはならない二人であったし、図らずもこのような邂逅を与えてくださった辻元次官にも、現在では在宅療養支援という点で共通認識のもと、日慢協ともども積極的に連携をとって在宅療養支援を慢性期医療の立場から支えるとお約束をしている。

さて、その麦谷氏は何冊もマジックの専門書を書かれている。その書によると、彼は幼少時よりマジシャンになりたいという心づもりをされていたそうであるが、短躯であったために自らがエンターテイナーとしての将来に不安を抱き、仕方なく医学部に進学したという。マジックをしていて仕方なく医学部に入学できるという彼の実力にも感心するが、私から見ると、彼はまさにレプリゼント能力に長けたエンターテイナーである。まさに容貌魁偉であり、彼の講演はエスプリが利いていて論理的かつ独自性があり、ときに聴衆を爆笑の渦に巻き込む。厚生官僚としてのお堅い講演ですら、彼の実力は群を抜いている。残念ながら、私は麦谷氏のマジックは一度も見たことがない。是非、私が企画して彼の一大マジックショーを開催したいものである。

さて、「60歳からのマジック入門」は基本的な入り込みやすいマジックを写真入り、絵入りで懇切丁寧に書かれており、初心者でも簡単に理解できるものである。現役の医療技官が、マジックの専門書を一流出版社から書いてくれと依頼されること自体、誠に稀有なことである。今流行りの「How toもの」ではないのである。氏が過去に書いたものは今回のものと違って、分厚いマジック学術書といえるものである。現代のマジックには思いつきではなく、やはり理論的、科学的なEBMに基づいた、しっかりとして再現性あるものが求められているのであろう。要するに学問としての確立に、氏は大いに寄与している。

今回の「60歳からのマジック入門」は一転して「How toもの」に近く、入り込みやすい。まずは入門しなくてはならない。私は早速100冊を買わせていただいて、主に通所サービスやレクリエーションの係の人に読んでもらおうとしている。職員が理解をしてから、利用者に一つずつ習っていただこうと思っている。人間としては一つ習得したマジックは人に見てもらいたいものである。それを家に帰って、孫や近所の人に披露することで、高齢者の自己満足を満たし、明日への活力が湧いてくるであろう。そして、各地のデイケアから選抜して、初心者マジック大会をしてみようと思っている。

簡単に入り込めて材料費も安く、マジックをやる人の達成感と、それを見る周囲の本人を見直すきっかけとなる。他の習い事はなかなか周囲の観賞に堪えるレベルに達するには時間がかかる。マジックはその点とても取っつきやすいし、みんな興味がある。

ぜひ会員諸氏も、この私たちの同志である麦谷氏の本をお買いになって、利用者のモチベーションを上げる一助としてほしい。改めてこのような一般国民向けのマジック入門書を書かれた麦谷氏に感謝!!

 
 
 

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