今医療の崩壊がさかんに言われています。しかし今急に医師が減った、看護師が減ったわけでもなく、患者さんのニーズが急に変わったわけでもありません。
それは現場と乖離した国の制度変更や、医療費削減の影響であると考えます。現場の職員は一所懸命働いています。それでも追付かないのです。何がそうさせたのかよく考えてみる必要があります。勤務医が開業するからとか、看護師が家庭に入ってしまうとかいろいろ言われていますが、少なくとも現場の責任ではありません。私は労働環境を破壊している制度のためと確信しています。
国の安全の第1は国民の健康です。みえない外敵への対応よりも急がなければなりません。
国や経済界は自らの経済政策の失敗を、不確かな推計を使って医療費の伸びのせいにしています。全くけしからん話です。
世界一の健康長寿をほこり、対GDP比では安い医療費である日本の医療をWHOは評価していますが、日本では評価されていません。一部には更に対GDP比で医療費をさげようとしているのは、全くおかしな話です。国民の健康なくして国の経済の発展はありません。
現状を、打破するには医療費抑制政策をやめ増大を計るべきです。
療養病床の削減がさかんにいわれています。療養病床さえなくせば医療費が安くなり平均在院日数は他国と同じになると国は言いますが、制度のちがう国と国をくらべても意味がありません。都合のいいところだけ国際比較することは問題があります。
老人医療が点滴づけ、検査づけ、薬づけといわれていた1983年、私達は老人医療の質の向上を目指して「老人の専門医療を考える会」を立ち上げました。その実践団体として名前はいろいろ変わりましたが「日本療養病床協会」を立ち上げました。
療養病床は慢性の医療が必要な人々に医師を始め看護師、リハビリスタッフ、栄養士、薬剤師、医療相談員などが、チームを組んで、治療やケアに当たっています。
高齢者や障害のある人々の文化や価値感を大切にし治療に当たっています。
また急性期以後の亜急性・慢性期をささえる療養病床の充実なくして急性期医療も成り立たないと考えます。
また、これから増え続けると思われる広い意味での在宅療養の人々の支えも療養病床の役割と考えています。悪くなった時にいつでも入院できる保証や必要な在宅サービスの提供は多くの職種のいる療養病床からのサービスがかかせないと思っています。
この様に高齢者医療や在宅サービスを行う療養病床を削減するのは理解できません。国民が安心して人生を最期まで全うするように療養病床だからこそできる医療を提供していると確信しています。 |