記者会見報告など
「緊急要望書」
9月14日付で民主党に要望書を提出いたしました。
平成21年9月14日
民主党代表
鳩山由紀夫 様
日本慢性期医療協会
会 長 武久洋三
政策委員会
委員長 安藤高朗
緊 急 要 望 書
先の衆議院議員選挙では、国民の圧倒的支持を得られ、政権与党の座を勝ち得られたこと、心よりお慶び申し上げます。また、本年7月に当日本慢性期医療協会が実施した「政党への慢性期医療に関するアンケート調査」においては、貴民主党より誠実なご回答をいただき、誠にありがとうございました。当協会と意を同じくする考えをお示しいただきましたことに、大変心強く感じた次第です。
さて、貴民主党には、今後の政権与党としてのご活躍を大多数の国民が期待しているところでございますが、医療界においては社会保障費2,200億円削減、後期高齢者医療制度、療養病床再編等々、昨今の政策によるところにおいて大変な危機に直面しております。貴民主党のマニフェスト等を拝読いたしましたところ、私どもも今後の政策・政権運営に大いに期待させて頂いているところです。そこで、政権与党としての発足間もない時期ではございますが、医療に携わる現場としては猶予がございませんので、大変僭越ながら緊急要望書を提出させていただくことと致しました。
様々な難題に取り組まれなければならないことは存じ上げておりますが、国民の福利向上のため、下記の項目についても早急にご検討賜りますよう何卒よろしくお願い申し上げます。
①医療と介護の崩壊を食い止めるため、国による充分な財源確保と報酬(特に入院基本料)の大幅なアップをお願いいたします。
(医療と介護に従事している職員に尊厳ある業務に相応しい報酬が確保されなければ、人材が枯渇し医療難民・介護難民の発生は必至です。)
②急性期病院の再編を急ぎ、高度急性期病院を確立し医療崩壊を防いで下さい。そして、急性期医療を引き継ぐ慢性期医療の重要性と必要性を重視するようにお願いいたします。
(急性期治療が十分な効果を得るためには、それをフォローする良質な慢性期医療は不可欠です。短期間の急性期治療のみでは、多くの高齢患者においてはQOLがよい状態で地域に復帰することができません。)
③医療療養病床・介護療養型医療施設を含めた慢性期医療の実際上の必要性に対応した病床再編を、お願いいたします。
貴民主党のマニフェストでは、「療養病床削減計画を凍結し、必要な病床数を確保する」となっておりますが、特に介護療養型医療施設は地域の実情によりその機能の必要性、職員の確保等の状況が異なります。介護療養型老人保健施設等への転換という方向性を示すばかりではなく、医療機関が主体的に判断し、期限を決めることなく現在の病床をそのまま継続することができるように要望いたします。
また、今後ますます必要性が増大する慢性期病床の大幅な増床をお願いいたします。
(病床の枠組みを一般病床と療養病床という捉えかたではなく、一般病床の特定患者除外規定を廃止し、病床を急性期病床と慢性期病床に機能別分類を行う時期に来ていると考えます。)
④医療療養病床における「医療区分」等の見直しについて
介護保険施設、在宅サービスの整備が不十分な現状では、その基盤が整備されるまでは入院を継続し療養を必要とする患者がいることは明らかです。従って、入院患者の多くが医療区分1であっても医療機関が経営的に成り立つようにしなければ、国民の生活に支障をきたします。
また、医療療養病床の医療区分による報酬は、医療行為や薬剤費、処置などの医療費コスト等を反映させ、特に医療区分1 ADL3、並びに医療区分2・医療区分3をコストと相関した報酬とするようお願い致します。さらに、医療区分の分類については、患者の状態像が複数にわたる場合や合併症を有する場合には、相応の評価となるよう見直しを希望いたします。
⑤介護職員処遇改善交付金について
平成21年10月より介護事業所に従事する介護職員の賃金改善を目的とした「介護職員処遇改善交付金」が実施されることになっております。貴民主党がマニフェストに掲げている「介護労働者の賃金を月額4万円引き上げる」ことについては大きく評価しているところでありますが、医療は介護職員のみでなく様々な職種が携わっているため、職員をトータルで考えた賃金の改善が必要です。処遇改善については、介護職員のみならず他の職種もその対象とし、その原資を継続的包括的に事業者へ交付していただくようにお願いいたします。
⑥チーム医療について
慢性期医療では、患者の重症化に伴い、医師、看護・介護職以外にもリハビリスタッフ、薬剤師、栄養士、社会福祉士など、様々なコ・メディカルの職種が病棟での業務に携わっています。また、急性期病院では看護補助者の配置に対する報酬上の評価がないため、看護補助者で行うことができる業務も看護師が担っています。介護福祉士を含めた各種国家資格者の病棟配置、あるいは専門業務を患者に集中させるための病棟クラークの配置など、チーム医療の評価をお願いいたします。
⑦在宅療養支援診療所支援病院としての慢性期病床の明確な位置づけについて
慢性期医療の現場では在宅支援として、訪問診療、在宅からの患者の受け入れ、軽快された患者の在宅復帰、在宅療養支援診療所との連携等を行うに適した機能を有しています。つまり、慢性期病床を地域の中核医療機関とすることが在宅医療の要になると考えます。いつでも必要な時に適切な医療を提供できる医療機関として慢性期病床を在宅療養支援診療所支援病院に認定し、その機能のために必要な人員、設備を確保するための適切な報酬を要望します。
⑧合併症高齢者専門の救急医療体制の新たな構築について
合併症高齢者の治療を専門とする慢性期病床に、急性期機能を持った「高齢者急性期病棟」を確保することが必要です。高齢者が高度急性期病院に搬送されても、高度医療の対象とならないような場合は、できるだけ速やかに慢性期病院を中心とした「高齢者急性期病棟」に入院させる体制が求められているといえます。救急医療ベッドが慢性期の患者で占拠されることのないような救急医療体制の構築を要望いたします。
(そうすることによりミスマッチングな患者が高度急性期病院へ集中することを防ぎ、医療費の適正化にも有効です。)
⑨後期高齢者医療制度(長寿医療制度)については、貴民主党のマニフェストでも既に廃止と謳われております。有病率の高い高齢者を区分し、医療費の抑制を図ろうとするようなよこしまな意図を持った制度は廃止し、十分な国民的議論のもとに医療制度全般についての再検討をお願いいたします。
(すでに高齢者の自己負担は限度がきています。これ以上、不安定で信頼性の低い低額の年金から保険料を天引きすることは、困窮高齢者の著しい増加が心配されます。)
⑩社会医療法人の認可について
現在、社会医療法人制度においては、産科、小児科や救急業務を行うことが前提条件となっています。しかし、今後の超高齢社会の到来を考えるならば、地域包括医療センターとしての役割を果たしている慢性期医療拠点の在宅療養支援診療所支援病院についても、社会医療法人の認可を要望いたします。