記者会見報告など
毎日新聞 社説「療養病床 削減計画を実行せよ」について 当協会の考え方
毎日新聞11月23日東京朝刊に掲載されました社説「療養病床 削減計画を実行せよ」について、当協会の下記のような考え方を23日付けで毎日新聞社に送付いたししました。
前略 向寒の候、貴社ますますご清祥のことと存じます。日ごろより、社会の木鐸としての重要な役割に敬意を表しております。常時、読売新聞と貴紙を対比することにより、貴紙の中立的な報道姿勢にかねてより信頼をおかせて頂いております。しかし、平成21年11月23日(月)の社説における、「療養病床」についての論説には、一部に誤解と偏見が見られている上、統計上の数字を現在ではなく、2005年の数字を用いたり、ここ最近、5年間の医療界で特に慢性期医療を取り巻く環境の変化を十分に理解されていない点も散見され、誠に残念であります。基本的主旨である社会的入院を是正し、療養環境の良い介護保険施設や在宅で療養してもらうことは私たちも大賛成であります。日本慢性期医療協会は主に療養病床を有する病院が会員であり、現在、会員数は835病院です。その立場から、現状の説明とこれからの目標をお伝えすることをお認め頂きたいと存じます。日医は、主として診療所の利益の代表でありまして必ずしも慢性期医療の現場に精通されている訳ではございません。このような重大な社説をお書きになる前に当会に対して取材をして頂けなかった事は誠に残念です。2006年7月まで療養病床は、包括性という診療報酬制度の元、比較的軽症の患者さんの割合が多く、社会的入院の温床と言われても仕方のない病院も確かにありました。しかし、2006年7月から医療区分が導入され、医療の必要度とADLの重症度により重度の医療の必要な患者に手厚い報酬に変更していただいたおかげで、急性期病院で長期に入院されていた人工呼吸器患者や重度の後遺症の患者にどんどん入院してもらう方向となりました。その結果、現在では特に医療療養病床では、社会的入院はほとんどなくなったという状況に転換しております。それは、当会が2008年度2009年度に会員に対して行った調査結果にも出ておりますし、2009年に保険局医療課が中医協に出す資料として行った調査結果でも明らかなように、医療区分1が減少し重症患者を治療している現状が描出されております。当会会員の調査結果だけでは手前味噌かも分かりませんが、厚労省の調査は療養病床だけでなく、ご指摘の一般病床に入院中の患者にまで、無作為に抽出した病院を対象に行っており、誠に公平な調査での結果でしたが、当会で行った調査結果と同じ結果となっております。社説のように特養や老健の方が病床面積は広く生活療養には適しております。しかし、最近の入院患者は、生死を境とするような重度の方が多く、とてもレクリエーションなどができる状況にはありません。多くの重症患者の治療に音を上げて「療養病床はもっと楽な仕事と思っていた」と退職される医師や看護師も後を断ちません。だから医療職にある者でも、療養病床というものに対して抱いている漠然としたイメージが払拭されていないのですからマスコミや一般の方々にご理解頂けていないことは当然であり、これらも私達の協会からの発信が少ないということも原因と大いに反省いたしておる次第でございます。療養面積は、療養病床は6.4㎡ですが、問題は4.3㎡しかない一般病床の中にいる慢性期高齢者です。4人部屋どころか6人~8人の部屋で正にぎゅうぎゅう詰めで平均在院日数に計上せずに永久に一般病床に出来高払いで高額(療養病床の約1.5倍の費用)で入院し続けることのできる制度が温存されています。普通は、一般で90日以上入院すると退院促進のため大幅に入院費を減額される特定患者になるにもかかわらず、その除外規定があり、脳卒中や認知症の患者は療養病床で医療区分1のような人でも除外されて、永続的に入院可能な制度があり、急性病床と思われている一般病床に実はこのような実質、慢性期高齢者が7万人近く入院し、重度の医療区分3から1まで混在しているといわれております。要するに一般にも療養にも慢性期の医療が必要な人が増えて来ているのです。2008年10月23日に社会保障国民会議から出された近い将来の医療介護体制予想では、年間死亡予定者は現在の約1.5倍の50万人増。しかも医療・介護の必要な人は現在の約450万人から750万人へと300万人も増加するという恐ろしいものとなっています。そしてそのほとんどの約250万人を在宅などの居住系で対応せざるを得ない主張となっています。近未来において莫大な数の高齢者が病気になり、治療・療養を余儀なくされる現実は病床数を増床させない政策のままであれば、約2倍となる対象患者を治療しようとすれば、平均在院日数を半分にしなければなりません。今は一般病床約18日、療養病床約180日(6ヶ月)となっているところを、それぞれ10日、90日にしなければ社会的要請にとても応えられないのです。急性期病院の平均在院日数が半分になれば回復期を含む慢性期病床に入院の必要な人は2倍以上となるのです。衆院選前のアンケートでも全党が慢性期病床の増床の必要性を認めておられました。
確かに、いままでの10年間と全くフェイズの異なった今後の10年となるのです。療養病床に比べ老健や特養の平均在院日数は500日どころか1000日以上であり、治療の場である療養病床とは明らかに別の施設であることがわかります。しかし、まだまだ一部には多くの社会的入院を抱えた老人収容所と変わらない病院もたしかに存在していることも事実です。私達としても病院とは「治療の必要な病気の人が入院して出来るだけ早く適切に治療して、良くして退院してもらう」ことに目的と理念があるものであり、この枠から外れるものは一般であれ療養であれ、今後、存在を続けていけるものではありません。この点では貴社説と考えを同じくするものであり、叱咤激励されていると感じて、今後ますます病院本来の機能を発揮し、急性期治療後の患者さんを継承し、出来るだけ早く地域に戻れるよう努力するという病院の集団にしたいと考えております。どうかよろしくご支援いただきたいと存じます。
草々
追伸:最近の知見をお送りさせていただくご迷惑をお許し下さい。また療養病床の現状につきましては、厚労省保険医療課や当協会にお問い合わせいただきたいと存じます。いつでも病院に取材に来て頂いても結構でございます。真の国民のための医療を求めるという一点で協調させていただけたら幸いでございます。
一般社団法人日本慢性期医療協会
会 長 武久 洋三
副会長 中川 翼
安藤 高朗
清水 紘
松谷 之義
事務局長 池端 幸彦