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3対1介護のレベルで踏ん張るとき
     

4対1介護でやってきた病院は介護人員を増やす好機

介護療養型医療施設の3対1介護が今回の介護報酬改定で残念なことに廃止された。新たな介護報酬は、要介護5が1,360単位、要介護4が1,269単位、要介護3が1,168単位となったが、それでも医療保険の1,151点よりはかなり高い位置にある。医療保険の痴呆加算20点、日常生活障害加算40点、療養環境加算105点を加えると1,316単位と、介護保険の要介護5の方が高くなっている。

ところが、要介護1と2は老健施設並みとなっており、病院では要介護3以上をみていく方向性が示されたと考える。ただ、いままで3対1介護を行っていた病院では減収となる一方、4対1介護療養型医療施設連絡協議会を行っていた病院では逆に増収となり、割り切れない感情は残る。リハビリテーション関連では、介護療養型医療施設での慢性期の個別リハが評価され、医療保険より長期間行えるようになった。

以上から、病院では今後、要介護4、5を中心に医療必要度の高い人、維持期のリハを行う人が入院対象となる。当然、このような患者さんが多くなると、介護人員を減らすことはできなくなる。したがって、いままで3対1介護を行っていた病院は介護職員数を維持し、また、4対1介護を行っていた病院は介護報酬が増えたこの機会にこそ介護人員を増やすべきである。

それをしないと、サービスの質はともかく4対1介護でも対応できるとなると、春以降に控えている介護保険制度見直しの議論の中で「4対1介護体制でも十分」という認識が定着しかねない。ここは介護職を多く配置して踏ん張るべきだと考える。

その一方で、業務全体を見直し効率化を図る必要がある。見回せば漫然と行われているケアは結構あるものだ。職種間の情報共有やデータの一元化を図るための記録類の改善も必要である。電子カルテやオーダリングシステム導入も視野に入れておく必要がある。人件費の見直しも考えられるが、もともと安い人件費の職員も多く、高い給料をもらっている公務員の給料が下がったからといって、私立病院職員の給料を下げるのが適切かどうかは検討が必要である。経営状態や職員確保の面からも慎重に考えてほしい。有能な職員が退職していっては元も子もなくなる。

経営的な面からは自院の患者さんの状態に合った機能を有する病棟を正しく選択する必要がある。医療保険では、早期リハの必要性の高い患者さんが多ければ回復期リハ病棟という選択があるが、同時に80歳以上の後期高齢者に回復期リハ病棟が適切かどうかも一考する必要がありそうだ。

特殊疾患療養病棟も収入面では魅力ある病棟である。ここは重度の患者さんが多いため、開設時には若干の職員増が必要である。昨年4月から老人医療病棟でも特殊疾患入院施設管理加算350点が算定可能になっており、選択肢が広がった。

いずれにしても、これらの病棟への移行に際しては、職員の意向の確認や他の病棟勤務の職員と労働負担のバランスを考えないとうまくいかない。ハード面でも家族とともに過ごせる部屋や、残された人生を価値あるものとするにふさわしい環境を考慮すべきである。霊安室のあり方も重要な課題だ。

 

全職員がチームの一翼を担い自信と責任を持って働ける場に

しかし、それにも増して大切なのは職員の対応である。患者さんを人として尊厳をもってみる心と技術を身につけ、すべての職員がチームの一翼を担って取り組み、自信と責任を持って働かなければならない。働く者の満足なしには決してよい医療やケアはできないと確信している。いま、世の中に感動することがあまりにも少ない。ケアの中で感動を覚える仕事をしようではないか。私たちにはこれができると確信している。このような環境をつくるのが経営者の役目であり、また、責任でもある。

在宅支援も重要な役割である。いざというときにはいつでも入院できる体制を備えておくべきである。

国内で失業者は増える一方であるが、私たちが本当にほしい人材はなかなか現れない。たとえ採用しても、権利・義務・責任のバランスが、権利だけの主張に偏り、一から教育のやり直しが必要な場合も少なくない。教育改革には膨大な時間がかかりそうである。

しかし、一転して私たちの周りに目を向けると、そこには日本独自の素晴らしい文化や食習慣を身につけ、大自然に恵まれ、質実に生活を重ねてきたお年寄りが大勢いるのである。私たちは彼ら先輩から多くの知識や智恵を学びとり、これを大いに活用し、後世に伝えていくべき立場にあると思っている。

介護報酬が一段落した後は、介護保険制度そのものの見直しの議論が始まる。新しい分科会が設けられ検討されるが、発言できる立場になれば、「老人の医療やケアはスタッフの量と質、チームワークにより初めて確保できるものであって、少人数では多数の患者さんによいケアはできない」という主張を続けていきたい。そのためには結束力が必要である。組織の拡充に向け会員の皆さまには今いっそうのご理解とご支援をお願いしたい。

(2004/1)

 

 
 

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